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青森家庭裁判所 昭和44年(家イ)13号 審判 1969年4月16日

申立人 上田エミ子(仮名) 外一名

相手方 上田順二(仮名) 外二名

主文

一  相手方上田順二、同上田さと、同上田誠は従前のとおり当分の間申立人上田エミ子との共同名義で別紙目録記載の水田を耕作することができる。

二  相手方上田順二、同上田さと、同上田誠は連帯して第一項の耕作をする間毎年その耕作をした年の一一月末日限り粳精並等米二俵(一俵六〇K積)を申立人エミ子に支払わなければならない。

三  相手方上田順二、同上田さとは連帯して金五〇万円を申立人エミ子に支払わなければならない。

理由

第一  本件調停申立書、記録添付の戸籍謄本、住民票、登記簿謄本、資産証明書、○○町農業委員会からの回答に調停の全過程を綜合すると次の事実を認めることができる。

一  相手方誠は相手方順二の長男であるが、実母は亡く相手方さととは継母の関係にある。

相手方ら三名は肩書住居地に同居し、農業に従事している。

二  申立人エミ子は相手方順二、同さとの四男一三と昭和四〇年九月二七日婚姻し、同四一年六月一〇日長男一夫(申立人)をもうけ婚姻生活を継続していたところ、夫一三は同四三年六月一八日鉄道事故により不慮の死をとげた。

三  別紙目録記載の水田は、亡一三が婚姻後の昭和四一年三月一七日贈与により相手方順二から亡一三に、同四三年六月一八日相続により亡一三から申立人エミ子に、各所有権が移転し、何れもその旨の登記手続を経由しているところ、申立人一夫を除くその余の当事者全員共同で耕作し、相手方ら三名から申立人エミ子に対し、同人および申立人一夫の飯米を供与してきたが所有者と相手方らとの間には小作契約はない。

四  亡一三は申立人エミ子との婚姻前○○生命保険会社との間に保険金五〇万円二口(うち一口は倍額保障)受取人相手方順二、同さととする生命保険契約をなしたが、亡一三は長男一夫出生後受取人を申立人エミ子に変更することを申立人エミ子に告げていたが、その手続をしない前に前記のとおり鉄道事故により死亡し、保険金一五〇万円は相手方順二、同さとにおいて折半して受領した。

五  申立人エミ子は夫死亡後肩書住居地の○○アパートに遺児一夫と同居し、○○町役場の売店に本俸一二、〇〇〇円で勤務している。

第二  申立人一夫は、相手方順二および同さとにおいて連帯して申立人一夫に対し前記保険金一五〇万円を支払うこと、申立人エミ子は相手方ら三名が申立人エミ子の別紙目録記載水田の耕作を妨害しないことをそれぞれ求めて本件調停を申し立てた。

本調停委員会において種々調停を試みたところ、申立人らは、申立人一夫の関係では相手方順二および同さとが前記保険金の約半額を申立人一夫に支払うこと、申立人エミ子の関係では相手方三名が従前どおり別紙目録記載の水田を申立人エミ子との共同名義で耕作し、同申立人および一夫の飯米を供与することで妥協する意思を示したが、相手方ら三名は、上記申立人エミ子の妥協案に反対しない意向を示したのみで、申立人一夫の金銭支払いの求めには全く応じないままで調停は成立するに至らなかつた。

第三  上記の各事実および調停の経過とそれに伴う一切の事情を斟酌し調停委員高坂英一、滝野沢栄一および玉熊テイの各意見を聴き当事者双方の公平を考慮して家事審判法第二四条に則り、主文のとおり審判する。

なお本件申立書の申立の趣旨によると扶養を求める旨の記載があるが、その趣旨は遺児を抱えた未亡人が亡夫の両親に経済的援助を求めるものと解するのが相当であるから、家事審判法第九条の乙類審判事件としての審判はしない。

(家事審判官 畔上英治)

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